アメリカのセールスタックスと日本の消費税の違い|輸出免税・課税事業者・州ごとの登録

公開日:2026年9月12日 · 更新日:2026年9月16日 · Laramie Ledger Tax

はじめにお読みください: 本記事の日本の消費税に関する記述は国税庁の公表資料の要約です。日本側の申告・判断は税理士にご相談ください。当所は米国側の申告のみを担当します。

要点

米国のセールスタックスは、名前が似ているだけで日本の消費税とは仕組みが違います。 消費税は各取引段階で課され、仕入税額控除で連鎖し、輸出は免税で、課税事業者なら還付を受けられる税です。米国のセールスタックスは最終小売段階で一度だけ課される単段階の税で、仕入税額控除も還付もなく連邦税が存在せず、税を課す 45 州とワシントン D.C.州ごとに登録し、義務の有無はネクサスで決まります。輸出免税に相当する還付もなければ、輸入消費税に相当する税もありません。消費税の発想を米国に持ち込むと、直感のほぼすべてが外れます。

まず日本の消費税を、国税庁の資料で整理する

日本のセラーにとって基準点は消費税なので、比較の前に仕組みを確認します。

  • 税率: 標準税率は 10%(消費税 7.8% + 地方消費税 2.2%)、軽減税率は 8%(6.24% + 1.76%)で、軽減税率は飲食料品(酒類・外食を除く)と定期購読の新聞に適用されます(国税庁 No.6303 消費税及び地方消費税の税率)。
  • 納税義務: 基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下の事業者は原則として納税義務が免除され、「消費税課税事業者選択届出書」を出せば任意に課税事業者になれます(国税庁 No.6501 納税義務の免除)。
  • 輸出免税: 「国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け」は免税で、輸出許可書等を 7 年間保存することが要件です(国税庁 No.6551 輸出取引の免税)。
  • 還付: 免税事業者は課税仕入れに係る消費税額の控除ができず、還付を受けるには課税事業者である必要があります(国税庁 No.6613 免税事業者と仕入税額の還付)。
  • インボイス制度: 令和 5 年 10 月 1 日から、買い手が仕入税額控除を受けるには原則として登録を受けたインボイス発行事業者からのインボイスの保存が必要で、登録を受けると課税事業者として申告が必要になります(国税庁 インボイス制度の概要)。

つまり消費税は、多段階・控除連鎖・輸出免税・還付あり・全国一律・国税という性格の税です。米国のセールスタックスは、この 6 つのどれにも当てはまりません。

違いその 1:多段階の控除連鎖か、最終販売への一回課税か

消費税は各段階の付加価値に課税し、米国のセールスタックスは最終販売に一度だけ課税します。 消費税では、各段階の事業者が売上に係る税から仕入に係る税を控除し、差額を納めます。この「控除の連鎖」があるからこそ、輸出免税の事業者は仕入で払った税が還付されます。

米国のセールスタックスは、「取引時に支払われる、商品またはサービスの取引に対する一般的な税」であり(Cornell Law School)、小売業者が最終消費者から徴収して州に納めます。控除の連鎖はありません。一度だけ課される設計だからです。州の税率はおおむね 2.9%〜7.25% で、これに市・郡の上乗せが加わります。

違いその 2:仕入税額控除も還付もない

米国では、事業用に購入したものに払ったセールスタックスは単なるコストで、戻ってきません。 消費税の感覚では仕入に払った税は「控除できる資産」ですが、米国にその概念はありません。

代わりにあるのが**リセール証明書(免税証明書)**です。再販売用の在庫を仕入れる際、仕入先にこの証明書を渡せば最初から非課税で仕入れられ、税は最終販売まで課されません。還付ではなく、単段階の設計を保つための仕組みです。日本の輸出免税による還付——「払った税が戻る」——に相当するものは米国に存在しません。そして顧客から徴収した税は、預かっている州のお金であって、仕入と相殺できるものではありません。だからこそ登録していない州で徴収することは、徴収しないよりも悪いのです。

違いその 3:国税ではなく州税、登録は州ごと

連邦のセールスタックスは存在しません。 「連邦レベルでは売上税や付加価値税(VAT)に関する規定は存在しない」(PwC Tax Summaries)ため、国に登録するものは何もなく、全国共通の番号もありません。日本のインボイス発行事業者の登録番号のように「一つ取れば全国で通用する」番号は、米国にはないのです。

セールスタックスは 45 州とワシントン D.C. の州・地方のレベルに存在します(アラスカ、デラウェア、モンタナ、ニューハンプシャー、オレゴンの 5 州には州全体のセールスタックスがありません)。したがって、義務のある州ごとに、その州の歳入庁に登録し、その州に申告します。

違いその 4:免税点ではなく「ネクサス」

日本の 1,000 万円の免税点は「そもそも納税義務があるか」の全国一律の基準です。米国で義務の有無を決めるのはネクサス、すなわちその州とのつながりで、物理的なもの(在庫、人員、事務所)か経済的なもの(その州への十分な販売額)のどちらかです。2018 年の South Dakota v. Wayfair 判決以降、物理的存在は不要になり、経済活動だけで徴収義務が生じます(Sales Tax Institute)。

基準額は州ごとに決まり、州ごとに測ります。 サウスダコタ州の当初の基準は年間売上 $100,000 または 200 取引で、現在は $100,000 が最も一般的ですが、州によって異なります。まとめて出す申告はありません。州ごとの全体像は州別のセールスタックス・ネクサスをご覧ください。

日本のセラーにとって特に重要なのは、FBA 在庫は金額にかかわらず物理的ネクサスを生むことです。基準額未満の州でも、在庫が置かれた瞬間にその州とのつながりが生じます。ただしネクサス=申告義務ではなく、次の違いが効いてきます。

違いその 5:マーケットプレイス・ファシリテーター

Amazon.com での販売については、マーケットプレイス・ファシリテーター法により Amazon が税を計算・徴収・州に納付します。 2026 年時点で、セールスタックスのあるすべての州がこの法を持っています。日本の消費税にはこれに相当する「プラットフォームが売り手に代わって納税する」一般的な仕組みはなく、Amazon.co.jp での販売でも納税義務者は売り手自身です。

その結果、Amazon のみで販売するセラーにとって、FBA 在庫による 20 州のネクサスは、提出すべきものがほとんど残らない 20 州を意味することが多いのです。ただし一部の州は登録やゼロ申告を求めます。自社サイトでの販売は Amazon の徴収の範囲外で、自分で対応します。詳細は FBA 在庫とセールスタックスのネクサスを参照してください。

違いその 6:輸入消費税に相当するものはない

日本に商品を輸入すると輸入消費税を払い、課税事業者なら仕入税額控除の対象になります。米国に輸入消費税はありません。 米国にあるのは多くの輸入品に課される関税で、U.S. Customs and Border Protection が国境で徴収します。別個の課徴金であり、後で控除・還付できる消費税ではありません。セールスタックスは、そもそも適用されるとしても、後日——商品が米国の顧客に販売された時点で——発生します。

一覧表:消費税 vs セールスタックス

論点日本の消費税(国税庁資料による)米国のセールスタックス
課税のレベル国税+地方消費税、全国一律州・地方税。連邦税なし
税率10%(軽減 8%)州 2.9%〜7.25% + 地方の上乗せ。5 州はなし
段階多段階、仕入税額控除で連鎖単段階、最終小売販売に一回
仕入に払った税控除可能コスト。控除も還付もなし
輸出免税、課税事業者なら還付還付の仕組みなし。州外・国外への販売はそもそも仕向地ベース
納税義務の基準基準期間の課税売上高 1,000 万円州ごとのネクサス(物理的または経済的)
登録課税事業者・インボイス発行事業者として国に一つネクサスのある州ごとに
請求書要件インボイス制度(適格請求書)なし。免税販売にはリセール証明書を保管
プラットフォーム販売売り手が納税義務者マーケットプレイス・ファシリテーターが徴収・納付
輸入時輸入消費税(控除対象)関税のみ(控除・還付なし)

では米国のセールスタックスとは、一言で言えば何か

州・地方レベルの、仕向地ベースの、単段階の小売税であり、顧客から一度だけ徴収し、控除も還付もなく、ネクサスがある州ごとに登録して負う税です。 消費税のあらゆる直感——輸出免税で還付、一つの登録番号、全国一律の免税点、インボイス、輸入消費税——は、米国では存在しないか、別のものに置き換わります。

正直な線引き

セールスタックスが消費税ではないと知ることは、自分がどの制度の中にいるかを教えてくれます——しかし、どこで登録しなければならないかは教えてくれません。 その答えは、州別の販売額、FBA 在庫の所在地、そして立法によって変わる各州の現行の基準額で決まります。

日本側の消費税——課税事業者の選択、輸出免税、還付——は税理士の領域です。米国側で本当に複数州の登録が必要な場面では、当所の売上税の登録・申告サービスが、ネクサスのレビュー、各州での登録、その後の継続的な申告を州ごとの料金で担います。米国 LLC を作るかどうかそのものを迷っている方は、Amazon.com 輸出セラーは米国 LLC を作るべきかを先にお読みください。

公式参照: 国税庁 No.6303 消費税及び地方消費税の税率 · 国税庁 No.6501 納税義務の免除 · 国税庁 No.6551 輸出取引の免税 · 国税庁 No.6613 免税事業者と仕入税額の還付 · 国税庁 インボイス制度の概要 · PwC Tax Summaries — United States, Other Taxes · Cornell Law School — Sales Tax · Sales Tax Institute — Wayfair economic nexus FAQ · U.S. Customs and Border Protection — Customs Duty Information

本記事は一般的な情報であり、日本または米国の税務上の助言ではありません。州のセールスタックスのルールと基準額は州ごとに異なり頻繁に変わります。日本側の申告・判断は税理士にご相談ください。当所は米国側の申告のみを担当します。

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よくある質問

米国のセールスタックスは、日本の消費税のように仕入税額控除や還付を受けられますか?
受けられません。米国のセールスタックスには仕入税額控除も還付の仕組みもなく、最終小売段階で一度だけ課されます。再販売用の仕入れはリセール証明書を渡して最初から非課税で仕入れますが、これは払った税の還付ではありません。輸出免税による消費税還付に相当するものは米国にはありません。
米国全体をカバーする一つの登録番号はありますか?
ありません。連邦のセールスタックスが存在しないため、全国共通の登録も番号もありません。ネクサスのある州ごとに、その州の歳入庁に登録し、州ごとに申告します。日本の適格請求書発行事業者の登録番号のような全国一つの番号は存在しません。
日本の消費税の 1,000 万円の免税点のような基準は、米国にもありますか?
考え方が違います。日本の免税点は「納税義務があるかどうか」の基準ですが、米国の経済的ネクサスの基準額(多くの州で年間売上 $100,000)は「その州に義務を負うかどうか」の基準で、州ごとに測ります。基準額未満でも、その州に在庫があれば物理的ネクサスが生じます。
Amazon.com での販売なら、セールスタックスは Amazon が処理してくれますか?
はい。マーケットプレイス・ファシリテーター法により、Amazon がマーケットプレイス上の販売について税を計算・徴収・州に納付します。ただし FBA 在庫がある州では登録やゼロ申告を求められることがあり、自社サイトでの販売は自分で対応します。
米国に商品を輸入するとき、日本の輸入消費税のような税を払いますか?
輸入消費税に相当するものはありません。米国は多くの輸入品に関税を課し、税関・国境警備局(CBP)が徴収しますが、これは別個の課徴金で、後で控除・還付できる消費税ではありません。セールスタックスは、かかるとしても後日、米国の顧客に販売した時点で発生します。
インボイス制度のような請求書の要件は米国にもありますか?
ありません。米国のセールスタックスには仕入税額控除がないため、控除のための適格請求書という概念も存在しません。代わりに、免税で販売する場合に買い手から受け取るリセール証明書・免税証明書を保管する義務があります。

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