FBARの申告方法|BSA E-Filingでの手順を入力項目ごとに解説(個人・米国LLC)
要点
FBAR は、FinCEN の BSA E-Filing システムで電子提出します。個人はアカウント登録なしで提出できます。 手順は、①対象になるか確かめる、②口座ごとの最高残高を求めて米ドルに換算する、③表紙と Part I(申告者情報)を入力する、④Part II〜V(口座情報)を入力する、⑤検証・控えの保存・署名・送信、の 5 段階です。入力項目の名前と番号は、FinCEN の記入要領「FBAR Line Item Filing Instructions」に合わせています。
そもそも提出が必要かどうか、誰が「米国人」に当たるかは、FBAR とはで説明しています。このページは、提出すると決まった後の手順です。
始める前に、何を用意すればいい?
入力を始める前に、次の情報を手元にそろえておくと一度で終わります。
- 口座ごとに:金融機関の正式名称と住所、口座番号、口座の種類(銀行・証券・その他)、その年の最高残高
- 申告者について:米国の納税者番号(個人は SSN または ITIN、LLC は EIN)。ない場合はパスポートなどの番号と発行国
- 個人の場合:生年月日、パスポートと同じローマ字表記の氏名、住所
- 配偶者と共同名義の口座を 1 通の FBAR でまとめて出す場合:夫婦双方が署名した Form 114a(FinCEN には送らず、手元で保管します)
IRS は、口座ごとに口座名義、口座番号、金融機関の名称と住所、口座の種類、その年の最高価値を記録し、FBAR の期限から 5年間保管するよう求めています(IRS の FBAR ページ)。
手順 1:提出が必要か、もう一度確かめる
FinCEN の記入要領は、提出義務を次のように定めています。「米国外の金融口座に金銭的利益または署名権限を持つ米国人は、その外国金融口座の合計価値が暦年中のいずれかの時点で $10,000 を超える場合、FBAR を提出しなければならない」。
- 「米国人」には、米国市民、グリーンカード保持者など米国の居住者、そして米国で設立された LLC などの事業体が含まれます(31 CFR 1010.350(b))。
- 判定は口座ごとの最高残高の合計で行います。合計がちょうど $10,000 なら対象外、1 ドルでも超えれば対象です。
詳しい判定方法はFBAR とはをご覧ください。
手順 2:最高残高を求めて、米ドルに換算する
記入要領は、各口座の金額を 2 段階で求めるよう指示しています。
- 口座の通貨のまま、その暦年の最高残高を求めます。 最高残高とは「暦年中に口座にあった通貨または非貨幣資産の最大価値の合理的な近似値」です。定期的な明細書が最高残高を適正に反映していれば、明細書に基づいて構いません。口座が複数あれば、口座ごとに別々に求めます。
- 米ドル以外の通貨なら、米ドルに換算します。 使うのは、その暦年の最終日の米国財務省のレート(Treasury Reporting Rates of Exchange)です。そのレートがない場合は、ほかの検証可能なレートを使い、出所を記載します。
金額は 1 ドル未満を切り上げた整数で書きます。記入要領の例では、$15,265.25 は $15,266 です。計算結果がマイナスになる場合は 0 を入力します。
円建て口座の例: ある口座の 2025年中の最高残高が 1,800,000 円だったとします。換算するのは、この 1,800,000 円です(年末残高ではありません)。これを 2025年12月31日の財務省レートで米ドルにして、1 ドル未満を切り上げます。月ごとのレートで換算し直す必要はありません。
口座が 25 未満で、合計が $10,000 を超えたかどうかがどうしても分からない場合は、各口座について口座情報を入力し、「金額不明(amount unknown)」の欄(Item 15a)にチェックします。
手順 3:BSA E-Filing を開き、表紙を入力する
個人が自分で出す場合は、アカウント登録は不要です。 FinCEN は「個人は BSA E-Filing アカウントを登録せずに、BSA E-Filing システムで FBAR を電子提出できる」としています(FinCEN の FBAR ページ)。
他人の代わりに提出する第三者(申告代行者)は、BSA E-Filing に機関として登録しなければならず、個人用の入口は使えません。本人は Form 114a に署名して代行者に提出を授権し、114a は FinCEN に送らず保管します。
表紙(header/cover page)では次を入力します。画面の見た目は改修されることがありますが、項目は記入要領のとおりです。
- 報告書の名前(Filing Name):自分で決める管理用の名前です。記入要領の例は “John’s 2013 FBAR” や “entity name 2013 FBAR” です。送信後の状況確認に使います。
- 提出の種類:新規(New report)か修正(Amendment)か。
- 第三者が提出する場合はチェックを入れ、第三者の欄を記入します。
- 期限後の提出の場合(報告対象年の翌年 10月15日を過ぎて提出する場合)は、リストから遅延の理由を選びます。該当する選択肢がなければ「その他(other)」を選び、説明を書きます。
続いて報告書の 1 ページ目で、報告する暦年を 4 桁(例:2025)で入力します。
手順 4:Part I 申告者情報を入力する
| 項目 | 入力する内容 | 記入要領のポイント |
|---|---|---|
| Item 2 申告者の種類 | 個人は a(Individual) | 署名権限だけを報告する個人も a |
| Item 3 米国の納税者番号 | SSN、ITIN、または EIN | 3a で番号の種類を選びます |
| Item 4 外国の身分証明 | 米国の番号がない場合だけ | パスポート、外国の納税者番号、その他から選び、番号と発行国を入力します |
| Item 5 生年月日 | 個人のみ | MM/DD/YYYY の形式。1948年6月1日なら 06/01/1948 |
| Item 6〜8a 氏名 | 個人は姓・名・ミドルイニシャル | 事業体は Item 6 に名称を入れ、7〜8a は空欄。個人は Item 6 に姓、Item 7 に名を入れます。日本人の氏名なら、パスポートのローマ字表記で姓を Item 6、名を Item 7 に入れます |
| Item 9〜13 住所 | 番地、市、州、郵便番号、国 | 米国外に住む個人は、米国の郵送先住所があればそれを、なければ外国の居住地の住所を入力します。事業体は米国の郵送先住所、なければ外国の郵送先住所です |
| Item 14 口座数 | 25 以上かどうか | 金銭的利益のある口座が 25 以上なら総数だけを入力し、Part II・III は記入しません(ただし記録は保管し、求められたら提出します) |
手順 5:口座情報を、口座の持ち方に合った Part に入力する
口座は、持ち方によって入力する Part が分かれます。
- Part II:本人が単独で所有する口座
- Part III:共同名義の口座
- Part IV:署名権限はあるが、金銭的利益のない口座
- Part V:連結報告(50% 超を所有する親会社がまとめて提出する場合)
Part II の主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Item 15 | その年の最高残高(米ドル、年末レートで換算) |
| Item 15a | 金額不明の場合のチェック |
| Item 16 | 口座の種類:銀行(Bank)、証券(Securities)、その他(Other、内容を記入) |
| Item 17 | 口座のある金融機関の正式名称 |
| Item 18 | 口座番号 |
| Item 19〜23 | 金融機関の住所と国 |
口座が多くて欄が足りなければ、画面上の「+」で Part を追加します。
配偶者と共同名義の口座:次の条件をすべて満たせば、配偶者は別に FBAR を出さなくて構いません。①配偶者が報告すべき口座がすべて、提出する側との共同名義であること、②提出する側がそれらの口座を期限内の FBAR で報告すること、③夫婦が Form 114a に署名して保管していること。そうでなければ、夫婦それぞれが FBAR を出し、共同口座の全額をそれぞれ報告します。
子どもの口座:子ども本人に提出義務がある場合、原則は子ども本人が提出します。年齢などの理由で本人が提出できない場合は、親や後見人が代わりに提出し、Item 45 の肩書の欄に “Parent/Guardian filing for child” と入力します。
手順 6:署名して送信する
記入要領は、入力が終わったら表紙に戻り、報告書を検証し、控えを保存し、印刷して手元に残したうえで、署名して送信するよう指示しています。
- Item 44 署名:表紙で電子署名すると、署名したことになります。
- Item 44a:第三者が作成した場合にチェックし、第三者の欄を記入します。
- Item 45 肩書:事業体を代表して提出する場合や、署名権限だけの口座を報告する場合に記入します。自分の口座を個人として報告する場合は空欄です。
- Item 46 日付:署名時に自動で入ります。
送信後は、その報告書の **BSA 識別番号(BSA Identifier)**がメールまたは BSA E-Filing のメッセージ機能で通知されます。保存した控えと BSA 識別番号が、提出したことの記録になり、修正申告でもこの番号を使います。
提出した後に誤りに気づいたら?
記入要領の指示は次のとおりです。新しい FBAR を最初からすべて入力し直し、提出の種類で修正(Amendment)を選び、**元の報告書の BSA 識別番号(Prior Report BSA Identifier)**を入力します。元の番号が分からなければ、0 を 14 個(00000000000000)入力します。
期限はいつ?過ぎたらどうする?
報告対象の暦年の翌年 4月15日が期限で、10月15日まで自動で延長されます。 延長の申請は不要です。期限が土日・祝日に当たる場合は、連邦所得税の期限と同じく、その次の平日までに提出すれば期限内です(記入要領)。
期限を過ぎていたら、同じ手順で、該当する暦年の FBAR をできるだけ早く提出します。IRS は「期限後の FBAR について IRS から連絡を受けておらず、IRS の民事または刑事調査の対象でもない場合、潜在的な罰金を最小限に抑えるため、できるだけ早く期限後の FBAR を提出すべきです」としています。10月15日を過ぎた提出では、手順 3 のとおり表紙で遅延の理由を選びます。
罰金の上限は、非故意の違反で報告書 1 件あたり $16,536 です(31 CFR 1010.821、2025年1月17日以降に賦課される分)。米国最高裁は 2023年の Bittner v. United States で、非故意の罰金は口座ごとではなく報告書ごとに計算されると判断しました。課すかどうか、いくらにするかは、事実関係に基づいて IRS が判断します。
日本側の手続きとの関係は?
FBAR は米国の手続きで、日本の手続きとは別です。日本の居住者(非永住者を除きます)で、12月31日時点の国外財産の合計が 5,000万円を超える方は、翌年 6月30日までに国外財産調書を提出する必要があります(国税庁 No.7456 国外財産調書の提出義務)。基準も期限も提出先も FBAR とは違います。日本側の申告や判断は税理士にご相談ください。当所は米国側の手続きのみを担当します。
自分で出すときに迷いやすいところは?
入力そのものは、上の手順で個人が無料でできます。迷いやすいのは、どの口座が対象か、最高残高をどう拾うか、の 2 点です。対象になる口座と「米国人」の範囲は、FBAR とはで詳しく説明しています。
公式参照: FinCEN — FBAR Line Item Filing Instructions(記入要領) · FinCEN — Report of Foreign Bank and Financial Accounts · BSA E-Filing システム · FinCEN Form 114a · IRS — Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR) · 米国財務省 — Treasury Reporting Rates of Exchange · 31 CFR 1010.350 · 31 CFR 1010.821 · Bittner v. United States (2023) · 国税庁 No.7456。
本記事は一般的な情報であり、税務または法務上の助言ではありません。BSA E-Filing の画面は改修されることがあります。入力項目は FinCEN の記入要領(2017年1月版)に基づいています。
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